「Educators’ Summit for SDG4.7 -for Fostering our Global Citizenship-」は、今年度で4回目の開催となり、 教職員や学生、団体職員、会社員など幅広くから約100名の方にご参加いただきました。また、今回はオンラインでの開催ということで、全国からご参加いただきました。今年度のサミットは、プログラム前半は基調講演、後半はが今年度、GiFTが受託した文部科学省「新時代の教育のための国際協働プログラム」事業の参加者による成果報告会を兼ねて、5つの分科会を設けました。以下、当日の様子をご報告いたします。
令和2年度「新時代の教育のための国際協働プログラム」
「新時代の教育のための国際協働プログラム(教員交流)」は、「倉敷宣言」、「G20教育大臣宣言」及び「G7教育大臣宣言」において取り上げられた教育課題について、諸外国の先進的な取組を事前調査の上、初等中等教育機関の教員を当該国(複数国も可)に短期に派遣して、経験や課題を相互に学び合うための教育実践活動や現地教員との交流及び現場体験に基づく国際比較研究を実施するほか、報告会の開催や報告書等の作成を通じ、成果普及を行うことを通じて多様化する教育課題に対する教育実践の改善に資することが目的として実施。
令和2年度は、事業の大テーマを「Society5.0時代に向けた教育」「インクルーシブ(包括的)で公平な教育」の2つとして公募・採択され、GiFTは「Society5.0時代に向けた教育」の枠にて、『技能教科を活用したメーカー(ものづくり、作り手)教育/クリエイティブラーニングを通した「持続可能な社会の創り手」意識と行動変容をもたらす教育の研究:教科横断型学習を生み出すカリキュラムマネジメント及び教員連携を生み出す教員養成、学校運営』をテーマに採択を受け、事業を実施してきました。
今年度事業の事業成果報告書は
こちらからダウンロードいただけます。▼
Message
Opening
イベントレポート:オープニング
聖心女子大学グローバル共生研究所副所長の永田佳之永田佳之教授にお話しいただきました。
2017年から開催しているこのサミットは “Something Special”で、良質な出会いが生み出される場であると永田先生。
ポストコロナ時代の教育を考える時、変容(transformation)や統合(integration)、刷新的(innovative)ということが頻繁言われる一方でしっくりこない人も多い。ただ、このイベントでは、それらも含めて、参加者の皆さんは、持続可能な未来をより現実的なものとして体感し、エンパワーされることになると思うと、心強いメッセージをいただきました。
基調講演
「クリエイティブラーニングと学習環境デザイン」
サイモンフレイザー大学 助教授
村井 裕実子 氏
村井氏はまず、学習者が課題を認識して自発的に行動できるようになることを目指すSDGs教育と、学習者の興味や力を引き出して、学習者が自ら学ぶ力をつけていくクリエイティブラーニング(創造的な学び)は、「いろいろな面で整合性がある」とお話しされました。続いて、村井氏は短時間で絵を描くミニアクティビティを紹介し、参加者は表現することで自分に対する理解、世界に対する理解が深まる、というまさにクリエイティブラーニングのエッセンスを体験しました。
さらに、村井氏はクリエイティブラーニングの成り立ちやその本質を解説した上で、では、どのようにしてそのような環境を作ることができるのか?先生たちはどのように授業に取り入れることができるのかという点について、長野県で実施した「信州メーカーフェロープログラム」での授業実践や、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の教員研修について紹介しました。
最後に、村井氏は「一番の学びは、学習者が舵を撮った時におこる」「先生の役割は、すでに作られた知識を与えることではなく、発明が起こるような環境を作ること」という言葉に触れつつ、子供たち(学習者)がクリエイティブに発明(invent)できる環境とは、
• 学習者が自分の考えを表現することができる場所
• そのための道具がそろっていて、サポーとしてもらえる場所
• 表現したくなるような雰囲気
• 表現したことが認められる場所
であるとお話しされました。
盛り沢山な内容の講演に、参加者も新しい視点と刺激をたくさん受けた時間となりました。
Talk Session
「新時代の教育のための国際協働プログラム×クリエイティブラーニングとは」
今年度、GiFTは、文部科学省令和2年度「新時代の教育のための国際協働プログラム」事業を受託し、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科と協働して調査・研究および教員交流研修を実施しました。GiFTの木村と前川博士より、事業の概要と成果、そして、学校教育におけるクリエイティブラーニングの今後の可能性について紹介しました。
Group Session
分科会
① 新時代の教育のための国際協働プログラム
『持続可能な社会の創り手』×メーカー教育/クリエイティブラーニング〜意識と行動変容をもたらす教育〜(国内研修報告)
弘前大学教育学部附属小学校 教諭 八嶋孝幸氏 (図工)
埼玉県立春日部女子高等学校 教諭 高橋晋一氏 (英語・総合)
講評:立命館小学校教諭 正頭 英和氏(「Global Teacher Prize 2019(グローバル・ティーチャー賞)」トップ10に選出)
分科会1では、八嶋氏・高橋氏より、研修の報告と自身の所属校における取り組みについて発表いただきました。
八嶋氏は、地域特性を活かした活動として、りんごの剪定枝を活用した和紙づくり、そこに込められたSDGsやクリエイティブ学習の視点や、それを学習単元の中に盛り込んだ今後のプログラム企画案や評価について話しされました。また、「つながりを生かして共に新たな意味や価値を生み出しながら、創造社会に求められる教育を推進していきたい。」今後のアクションに向けた決意を表明されました。
続いて高橋は、SDGsを学校の重点目標に含めること、そのために支援連携部の創設などの、SDGsを軸にした新しい形式に学校全体で取り組む事例を紹介しました。総合的な学習の「探究的な活動」における取り組みや、企業や団体、地域との連携活動とその成果や今後の課題についても言及されました。まとめとして、新時代の教育における体験的な活動の重要性と教科横断的教育の重要性についてもお話しされました。
お二人の発表に対して、本事業のアドバイザーである立命館小学校ぼ正頭英和氏より講評をいただくとともに、児童・生徒が多様な表現をするための留意点や、企業との連携におけるポイントについてもコメントをいただきました。
② 新時代の教育のための国際協働プログラム
『持続可能な社会の創り手』×メーカー教育/クリエイティブラーニング〜意識と行動変容をもたらす教育〜(海外研修報告)
Ms Stephanie Hayden, Dillard High School (USA)
Ms Marcia Nobue Sacay, Pioneiro Educational Center (Brazil)
船橋市立葛飾中学校 教諭 杉田茜氏 (美術・総合)
調布市立多摩川小学校 教諭 門野幸一氏 (5年生)
分科会②では、門野先生の進行のもと、海外の参加者のビデオメッセージによる発表に続いて、杉田先生に発表いただきました。
美術教育の価値をもっと高めたい、グローバルな視点を日本の公立中学校の教育にも取り入れたいという思いから「新時代の教育のための国際協働プログラム」に参加された杉田先生。勤務する中学校では美術の授業や総合的な学習の時間、学級活動、美術部の活動など、並行してクリエイティブ学習に取り組まれ、これらの活動や生徒の反応を通じて感じたことを研修での学びと照らし合わせながらお話しくださいました。
研修参加を経て、「美術科ならではの取り組みができる」「同じ志を持った仲間との出会いが自分自身のクリエイティブコンフィデンス(自信)につながった」とモチベーションを高めた杉田先生。今後は研修で出会ったStephanie先生とお互いの学校を繋いでコラボレーションをしたり、地域にいる画家や学芸員の方々とも連携して取り組んでいきたいと、力強くお話しされました。
③ 新時代の教育のための国際協働プログラム
「『持続可能な社会の創り手』育成に向けたスクールリーダーの役割」
枚方市立招提北中学校 校長 山本俊夫氏
奈良市都祁小学校 教頭 岸下哲史氏
分科会③では、ものづくりを中心に据えた学習の実践に向けてどのよな後押しができるかや、これからの時代に求められる学校経営について、山本氏と木下氏によるパネルディスカッションが行われました。
この中で、山本氏は、校長や管理職が先生の取り組みの障壁となりうる可能性を示唆し、先生も生徒も主体的に育つためには、失敗から学ぶことが大切であるという点について話されました。また、岸下氏は、生徒がやりたいと思ったことに対して、その生徒の活動を先生が止めてしまわないようにするためには、校長や管理職が先生、そして子供たちを絶対的に信頼し応援するという姿勢を示すことの重要性について触れ、地域について学ぶ機会を通じて先生自身も変容していき、それが地域と連携したカリキュラムマネジメントにもつながること、またその際に、管理職は教員の伴走役として支援していくことが大切であると解説されました。
参加者からの質問とともに、学校における管理職の役割の重要性について多岐にわたるお話をいただき、経験談溢れる充実した時間となりました。
④ SMALL WORLDS
「学外で創造性を育む新たな取り組み」
SMALL WORLDS 教育委員会 竹村真紀子氏 SMALL WORLDS 教育委員会 羽根田智子氏
ミニチュアテーマパークを活用した探究学習やSDGs、キャリア教育等のプログラムを提供しているSMALL WORLDS。
分科会④では、竹村氏と羽根田氏からSMALL WORLDSの「OFFSITE LEARNING LAB」について、そしてOFFSITE(学校外)での学びの機会の共創や今後の可能性について、80分の1のミニチュアワールドやワークスペースをライブ中継しながらお話いただきました。
竹村氏は、学校や先生、児童生徒のニーズに応じてそこに必要なスキルや環境を提供しながらプログラムを先生方と一緒に共創していくことが、「知の総合化」と「知の深化」につながるのではないかとお話しされました。児童生徒が日常としての学校から出て非日常の環境の中でいつもとは違う体験をすることで「知の振幅」が起こり、その学びを学校内に持ち帰ることで、更に学びを深めていくことができるということです。
学校と様々な施設がネットワークとして繋がることで学びの場が拡張されてより良い学びの機会を共創、共有することができるということを、これまでの様々な事例と共にお話しいただきました。
⑤ GiFT
「海外とオンラインでつなぐSDGs×共創型の学びの場づくり」
一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)
辰野まどか氏 相川千絵氏
東洋大学 Diversity Voyage Online 参加者
分科会⑤では、コロナ禍にオンラインで実施した「GiFT海外共創型研修Diversity Voyage Online」の特徴を紹介するとともに、参加した大学生がこの研修を通じて得た自身の変化や気づきについて熱く語る時間となりました。
マレーシアの参加者と共に言葉の壁を乗り越えながら、「世界をより良くする」をコンセプトにしたメニューの開発に取り組んだ彼ら。「英語ができる人だけがグローバルに行けるのではなく、僕みたいな英語が苦手な人でもオンラインだからこそ走り切れた」「オンラインであっても仲間の励ましで自分を成長させることができた」など、オンライン研修の可能性を印象づける言葉がありました。
分科会の参加者からは、「オンラインの研修でどれだけ自己変容ができるのだろうかとやや疑問に思っていた部分があったのですが、今回、東洋大生の生の声をお聴きし、オンラインでこれだけの学びと変容、気づきが生まれるのだということを知り感動しました」という感想を共有いただきました。
Reflection
振り返り
分科会後の「振り返り」の時間は、この日学んだことや持ち帰りたいと思ったことについて、グループで対話を深める時間となりました。
Voice
参加者の声(アンケートより抜粋)
-
アートと創造性について、改めて価値を認識しました。実はずっと絵を描くのをやめていましたが、再び絵を書き始めたいなと思います!やはりまず教員自身がワクワク・クリエイティブでいることを心がけたいと思います!あとは、是非今回の場から共創を始めたいと思います!
-
クリエイティブラーニングの手法を初めて知りました。自分の思いをどう形にして交流していくかが大切だと感じました。学生だけでなく教員自身のわくわくの気持ちを大切にしたいと思います。
-
2030年まであと10年ない、やらされSDGsになってはならないなと。ワクワクやモヤモヤを大切にして本来あるべき姿を大切にするという部分にハッとしました。
-
多くの志ある人と繋がれたことが嬉しいです。今後は自分のやって来た実践をまとめていきたい。それをいつでも取り出せるように未来に向けて準備していきます。
-
社会をより良くするために、教育の変革を起こしたいと考えている高校生です。自分自身、公立の学校での教育とグローバルシチズンシップをより重点を置いた教育を両方経験し、そこのギャップから、いつも公立の学校の教師やカリキュラムに対して疑問を抱いていましたが、今日はそこに変革を起こし、改善しようとしている大人の方が沢山いることに安心し、有り難く思いました。学んで終わりにするのではなく、是非ともに行動を起こしていきたいです。
-
学びがもたらす変容について、考えさせられました。変容の対象は学習者だけではなく、学習を提供する立場の人たち、ファシリテーターやアドバイザー、あるいは学校組織そのもの、地域、そしてやがては世界。地球志民の育成に向けた学びのあり方というのをもう一度見つめ直していきたいと思います。
About
開催概要
日時 | 2021年3月14日(日) 14:00〜17:30 |
---|---|
会場 | オンライン(zoomを使用) |
参加費 | 無料 |
主催 | 一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)
〒141-0021 東京都品川区上大崎2-15-19 MG目黒駅前ビル2F |
協力 | 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 |