2017年10月28日(土)、持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)の実現を目指す関係者が集い、未来の教育を描く 場『Educators’ Summit for SDGs 4.7 – For fostering out Global Citizenship』を聖心女子大学グローバルプラザにて開催いたしました。  
イベント当日は100名を超える参加者が会場に集まり、前半は様々な分野の第一線で活躍する6名の教育関係者によるライトニングトーク、後半には実践編として3つの分科会に分かれ、SDGs 4.7に関するワークショップや講義を実施。
全体を通じ、参加者同士が意見を共有し、繋がる対話の時間を設けたことで、学ぶだけでなく、参加者自らが体験し、知識を深め、未来へのビジョンを参加者同士で共有し合う場となりました。以下、当日の様子をご報告いたします。


当日の様子【RTV(リアルタイムビデオ)】

Message

辰野 まどか
Educators’Summit for SDGs4.7 実行委員会 一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT) 代表理事

 「Educators’ Summit for SDGs 4.7」は、ユネスコ・バンコク事務所・アジア太平洋地域教育局主催のグローバル・シチズンシップ教育(GCED)会合の参加メンバーから生まれたプロジェクトの一つです。このサミットは、SDGs 4.7に関わる、ESD(持続可能な開発のための教育)やグローバル・シチズンシップ教育、国際理解教育、環境教育、開発教育など、様々な分野で活躍、実践されている方々が全国から集まり、未来に向けた教育を体験・共有していく場となりました。

 新たにオープンしたばかりの「聖心グローバルプラザ」を舞台に、魅力的なライトニングトーク、そして、クリエイティブラーニング、GCEDテンプレート、SDGsカードゲームなど、多様な体験・視点にあふれた分科会、未来の教育に関するビジョンの講演、そして、参加者同士の学び合いの時間があり、多くの化学反応が生まれました。産官学民様々なバックグラウンド、若者から専門家までが、教育への熱気と共に時間を過ごすことができたのは、ひとりひとりの未来をつなぐ共通の舞台としてのSDGsがあり、また、SDGsを達成するための扇の要となるSDGs 4.7へのコミットがあったからだと思います。

 世界が分断していくことを憂うニュースがある一方で、SDGs 4.7に謳われているターゲット目標と、その実現に向けてパワフルに関わり続けるエデュケーターの存在が、「教育を持って世界を繋ぐことができる」ことを可能にするのだと確信することができました。

 このサミットは、2030年のSDGsの達成に向けて、教育で世界をつなぐ力強いキックオフになりました。そのキックオフを共に創り上げてくださった関係者の皆様、参加者の皆様に心から御礼をお伝え致します。この勢いを他の国々とも繋げ、文字通り教育で世界を繋げていけるよう、SDGs 4.7と共にみなさまと歩みを強めていきたいと思います。

Opening

イベントレポート〜オープニング

当日は一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)代表理事 辰野氏より開会挨拶と、今回のテーマとなる「SDGs 4.7」についての紹介から始まりました。「この目標の実現に向けたキックオフとなる本日、未来へ続く深い時間をお過ごし いただければ。」と辰野氏。

続いてUNESCOバンコク事務所 プログラムオフィサーのLay Chen Tan氏より、バンコクから映像でのご挨拶。「グローバル・シチズンシップ教育(GCED)、持続可能な開発のための教(ESD)のキーポイントは、変容を促す教育です。学習者が彼らを取り巻く世界のダイナミクスを理解し、彼ら自身の社会での役割や責任を理解し、21世紀の社会の課題に自分たちが自ら行動していかなければいけないことを理解することです。」と、メッセージをいただきました。

また、今回の会場をアレンジくださった聖心グローバル共生研究所・副所長、聖心女子大学教育学科教授の永田佳之氏より、会場であるグローバル共生研究所の成り立ちとSDGsとの関連性についてお話いただきました。「グローバル時代の共生を象徴するように作った、聖心グローバルプラザ。そして、1階にある展示・ワークショップスペース『BE*hive』の名前は、人間存在を深めるための教育というコンセプトを生かす意図で、敢えて”Bee”ではなく”Be”と名付けた空間です。」 多様なバックグラウンドを持ち集まった参加者が「未来の教育」をキーワードに語る本イベントにふさわしい空間で、いよいよ6人の教育関係者によるライトニングトークがスタートし、続いて3つの分科会へと進みます。

Lightening Talks

ライトニングトーク

①「持続可能な開発のための教育(ESD)の更なる推進に向けて」
文部科学省国際統括官付 国際統括官補佐 
鈴木規子 氏

鈴木氏からは、これまで日本が推進してきたESDとSDGsの関係・つながりについて、「ESDは持続可能な社会の担い手づくりを通じて、SDGsが掲げる17全ての目標の達成に貢献するもの」であるとお話いただきました。

また、昨今のSDGsの広がりを踏まえて、今後の日本の教育について「2017年3月公示の小・中学校学習指導要領の改定に伴い、『持続可能な社会の創り手』の育成が掲げられており、各教科に関連する内容が盛り込まれている。今回の改訂で、持続可能な社会の担い手を創る教育であるESDが、新学習指導要領全体において基盤となる理念として組み込まれたと理解できる。」と解説くださりました。

②「開発教育/国際理解教育とSDGs 4.7」
独立行政法人国際協力機構
広報室 地球ひろば推進課 課長 内藤 徹氏

内藤氏からは、独立行政法人国際協力機構(JICA)の活動とSDGs 4.7との繋がりについて、JICAの具体的なプログラム紹介と共にお話いただきました。

その上で、「グローバル社会が進むにつれ、教育に求められることも変わってきていると感じている。 『社会は 競争から共生へ』『話し合いは 討論から共創へ』『課題解決の方法は 正解探しから判断へ』『グローバル化の実情は 多国籍、国内の地方まで』 といった要素が大切になってくる」と示し、今後、SDGs 4.7がこれまでの様々な教育分野を繋げるプラットフォームになり得るのではないかというお話がありました。

③「インターネット前提社会のグローバル・シチズンシップ教育について」
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 大川恵子 氏

自身のプロジェクトにおいて、いかに地球規模の問題に対する気づきを促しているかをAwareness, Skills, Actionの3つのステップとともに紹介した上で、「今の世界では、2つのGlobal Society(インターネットと地球)において市民意識を持ってもらえることが大切だと思っている。」と、大川氏。

「2000年には6%しか使っていなかったインターネットは今や51.7%が使っているものになった。だからこそ、インターネットとどう関わるか、ということはこれから大切であり、地球での実際の活動だけでなく、インターネット社会における市民意識を育てたい。」というお話もありました。

④「グローバル・シチズンシップ・プロセスを活用した国内外のグローバル教育プログラム」
(一社)グローバル教育推進プロジェクト (GiFT) 代表理事 辰野まどか 氏

辰野氏からは、自身とグローバル教育との関わりの原体験となるご自身のお話と、“世界をよりよくする志”グローバル・シチズンシップ育成のために行なっているGiFTの教育プログラムについて、「私たちGiFTの教育プログラムは、すべてGiFTの提唱するグローバル・シチズンシッププロセスに沿ってデザインしている。それは、①自分を知り、②相手を知り、③共取り組み、④社会に参画する4つのプロセスを経ることで、自らが持つグローバル・シチズンとしての自覚を持てるようになること」が大切だとお話がありました。

⑤「中学校におけるグローバル・シチズンシップ教育の可能性」
文部科学省研究開発学校上尾市立東中学校グローバル・シチズンシップ科研究主任 松倉紗野香 氏

松倉氏からは中学校という教育現場での具体的な事例について、「文部省から研究開発学校の指定を受け、総合の時間を『グローバル・シチズンシップ科』としてカリキュラムを作り、世界のことを自分ごととして考えることができるよう工夫している。平成29年の学習のテーマにSDGsを取り入れていて、各学年の学習のテーマにそれぞれ設定して、学年ごとに取り組みを行なっている」と、ご紹介。プログラム導入時に大切にしている3つの学習ステップとともにお話いただきました。

⑥「クリエイティブ学習を通してアイデンティを育てる:米国MITメディアラボのとりくみ」
マサチューセッツ工科大学メディアラボ 博士研究員 村井裕実子 氏

「人は人に関わることについて、何かを作りながら学ぶ時に一番学ぶ。作りながら学ぶプロセスが、クリエイティブ・ラーニングである」と言う村井氏。
「実際に物を作って、仲間からフィードバックをもらうことは、社会のアクティブなクリエーターとしてのアイデンティティを持つことにつながる」とクリエイティブ学習について語りながら、「これはグローバル・シチズンシップにも繋がるものだと思う」と、語ってくださいました。

Selected Session

分科会

①「ハンズオンで考えるクリエイティブ学習を通した
グローバル・シチズンシップの育成」
マサチューセッツ工科大学メディアラボ 博士研究員 村井裕実子 氏
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科専任講師 前川マルコス貞夫 氏

村井氏のファシリテーションのもと、分科会①ではクリエイティブ学習を実施。多様な材料を使い、「みなさんのお気に入りの、明日のグローバルシチズンにとって大事なキーワードをモチーフにした、動く作品」をチームごとに作るワークショップを行ないました。作成後は、「クリエイティブラーニングスパイラル」に自分たちの作成工程を照らし合わせて、グループごとで振り返りを実施。 4P(Project, Passion, Peers, Play)はどのような役割を果たしていたか?という問いかけのもと、参加者が自らの作成工程を振り返りながら、クリエイティブ学習を体感する時間となりました。


②「グローバル・シチズンシップ教育テンプレートと日本における活用」
UNESCO バンコク事務所 プログラムオフィサー Ms. Lay Cheng Tan
宮城教育大学教授 市瀬 智紀 氏
玉川大学教授 小林亮 氏
上尾市立東中学校 グローバル・シチズンシップ科研究主任 松倉紗野香 氏
一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)リサーチフェロー 木村大輔 氏

UNESCOバンコクとテレビ電話をつなぎ、Lay Cheng Tan氏よりグローバル・シチズンシップ教育を広めるために現在作成中の学校教育を対象としたハンドブック「A pedagogical guidance on global citizenship education」についての講演をいただきました。また、市瀬氏からは多文化に対応できる教員育成について、小林氏からはネパールでのプロジェクトに関連した大学でのプログラム事例を紹介。松倉氏からは自身の中学校における教育現場の事例紹介、そして木村氏からは海外で展開されているグローバル・シチズンシッププログラムと21世紀型教育のあり方についてお話がありました。


③「SDGsの理念を体感する教育ゲーム『2030 SDGs』
-SDGsを通じた未来を創る教育の可能性を探る-」
一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト (GiFT) 
シニア・ダイバーシティ・ファシリテーター 鈴木大樹 氏

分科会③では、一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)のシニア・ダイバーシティ・ファシリテーター鈴木氏がファシリテート。SDGsを体感しながらゲーム感覚で学び合えるワークショップを通して、参加者全員で世界を共創する時間となりました。

 ワークショップでは、世界が直面する課題に向き合い、経済、環境、社会のバランスを保つことを目標にゲームを進めていきました。それにより、SDGsの本質は何なのか、どうしたらより良い世界を創ることができるのかなどの問いが浮かび、90分という短い時間の中でも、世界の動きを疑似体験し、それぞれの気づきが、他の参加者の学びになる対話の場が生まれていました。

Reflection

当日の振り返り

分科会を終え再び大会場に集合し、一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)シニア・ダイバーシティ・ファシリテーターの鈴木氏のファシリテートで、本日の全体振り返りを実施しました。異なる分科会に参加した人同士でグループを作り、1日を通して「どのような学びと発見があったか?」「持ち帰りたいことや、始めることは何か?」の2点の共有では、参加者たちの話が止まらないほどの盛り上がりでした。

また、更に大きなグループを作り、“本日の出会いと学びを通してのビジョン”をポストイットに書いて共有しました。一人ひとりの今後のアクションとビジョンが、会場後方に用意されたりんごの木に飾られました。

<参加者が掲げた今後のビジョン>

  • 今受け持っているクラスの子に、自分らしさ、仲間の良さがわかる学びの構築をする。
  • 全国の学校でESDを推進する。
  • 企業のCSR活動の推進を通して、「人」の行動変容を促し、2030年のSDGs達成に貢献する。
  • 生徒がGlobalな視点でCreativeな学びをつづけられる環境・授業を作っていく。
  • グローバルな視点、Nationalな視点を改めて考えてみる。
  • 常に新しく学び、呼吸することを心がけたい。教育分野を勉強したい。
  • SDGsを「自分ごと」にできる人を増やす機会の創出をする!

未来に向けたアクションが明確になり、更に盛り上がる会場では参加者同士の新たな繋がりが生まれていたようでした。最後に、実行委員会の市瀬智紀氏より閉会の挨拶をいただき、「SDGsは世界にある課題とその解決のために目指す方向を、17にまとめてくれました。グローバル・シチズンシップはそのための人材育成に貢献できるものだと思います。」というメッセージと会場の温かい雰囲気とともに、「Educators’ Summit for SDGs 4.7 –For fostering our Global Citizenship」は幕を閉じました。

Voice

参加者の声
  • グローバル・シチズンシップというキーワードのもとに、様々なステークホルダーの方々が集まり、交流することで生まれる可能性を感じました。アプローチ・方法論は多様ですが、このような場で対話し、今後の協働に繋げていくことが必要だと思います。(学生)
  • 教育が人間の全てに大切だと気付いた。また、自分の意見を卑下することなく伝えることが大切だと実感した。(団体職員)
  • 遠い世界のことを自分ごととして考えられるようにならなければいけないことを、改めて気づかされました。「教育」が日本の未来を担っている ことも強く実感しました。(会社員)
  • SDGs 4.7は一言で定義できるものではなく、その分教育現場でのコミットメントも難しいと思いますが、非常に重要なテーマだと思いました。 (会社員)
  • SDGsの中でGlobal Citizenshipがどのように位置付けられているのか、様々なセクターの中でどのように取り組まれているのかが良く分かりました。(教職員)  

Lecture

特別講演&懇親会

<特別講演>
「Education 2030に向けた日本の教育~世界の潮流とともに〜」
文部科学大臣補佐官、東京大学教授、慶應義塾大学教授 鈴木寛 氏

特別講演・懇親会は会場を「Café JASMIN」に移動。この日は特別講演として、文部科学大臣補佐官 東京大学教授、慶應義塾大学教授の鈴木寛氏にお越しいただきました。「我々大人が21世紀をつくり、22世紀まで生きる子どもたちのベースをつくってあげることが、教育の基本である。」というお話から始まり、20世紀に必要とされてきた能力と学校教育の様子や、その結果生まれた21世紀の現状についてのお話がありました。「『想定外』や『板挟み』にある現実世界を生き抜く力が21世紀には必要である。」と、今後求められる人材と教育について語る鈴木氏。「AIで解けない問題・課題・難題と向き合える人材」や「創造的・協働的活動を創発し、やり遂げる人材」についても述べられ、「アクティブラーニングをどう教えれば良いか、という考えよりも、教育者一人ひとりがActive Learnerになることが大切である。」というお話に、大きく頷く参加者のみなさんの姿が印象的でした。

<乾杯のご挨拶>
文部科学省 加藤 重治 氏

乾杯のご挨拶として、ESDの推進に長く関わっていらした文部科学省の加藤氏よりこれまでのESDの流れ、そしてこれからのグローバルな未来についてお話をいただき、さらに大きな未来に向けたエールの乾杯をいただきました。

<リアルタイムビデオ上映>
実践女子大学 松下慶太ゼミ

この日、実践女子大学 准教授 松下氏とゼミの学生が、リアルタイムビデオ(Real Time Video: RTV)を作成。映像を通して活動を振り返り、学びや気づきを深めるワークショップの記録の手法の一つとして、懇親会中盤では動画鑑賞も行ないました。

About

開催概要

2030年までに持続可能な社会を実現するための重要な指針として設定された持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて、ユネスコを中心にEducation 2030という世界規模での取り組みが実施されています。2020年に向け戦後最大規模と言われる教育改革、高大接続改革が起こる中、新学習指導要領においても大切な概念となるSDGsを実現するための教育(ESD:持続可能な開発のための教育、GCED:グローバル・シチズンシップ教育、開発教育等)の浸透、活用が課題となっています。

本イベントは、未来を見据えた様々な教育の形への理解を深めながら、産官学民で教育に携わる参加者=教育者がどのように教育現場でこれらの教育手法を浸透させていくか、その道筋を描いていくことを目的に掲げ、開催いたしました。

日時 2017年10月28日(土) 13:00〜18:00(サミット)
18:30〜20:30(懇親会)
会場 サミット:聖心女子大学 聖心グローバルプラザ
東京メトロ日比谷線「広尾駅」より徒歩3分
懇親会:聖心グローバルプラザ CAFÉ JASMIN
参加費 無料
主催 Educators’ Summit for SDGs 4.7 実行委員会
[事務局: 一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)
共催 聖心女子大学 グローバル共生研究所
後援 UNESCO Asia and the Pacific Regional Bureau for Education
日本ユネスコ国内委員会、外務省、国際協力機構、ESD活動支援センター
協力 慶應義塾大学メディアデザイン研究科

Educators’ Summit for SDGs 4.7 実行委員会

市瀬 智紀
国立大学法人宮城教育大学 国際理解教育研究センター長、教授
小林 亮
玉川大学 教育学部 教授
前川 マルコス貞夫
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 専任講師
辰野 まどか
一般社団法人 グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)代表理事、東洋大学食環境科学科 客員教授
木村 大輔
一般社団法人 グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)ダイバーシティ・ファシリテーター、明治学院大学国際学部 非常勤講師
松倉 紗野香
埼玉県上尾市立上尾東中学校 グローバルシチズンシップ科研究主任
お問い合わせ
Educators’ Summit for SDGs 4.7 実行委員会
事務局:(一社)グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)
Tel: 03-4540-1203 E-mail: info@j-gift.org
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