JICAでは、開発途上国に派遣中のJICA海外協力隊やJICAスタッフ(職員・専門員・研修員など)とオンラインで接続し、外国の生活や文化、国際協力の仕事など要望に沿って話を聞くことができる「JICAオンライン出前講座」を実施しています。今回は、学校の授業でJICAオンライン出前講座を活用した2名の先生にお話をうかがいました。

▶︎ JICA出前講座の概要についてはこちらをご覧ください。

▼目次

茨城県かすみがうら市立霞ヶ浦中学校

  1. 生徒たちに”リアル”を伝えるために
  2. 英語でのプレゼンテーションに挑戦!
  3. 小さな学校から飛び出す!大きな世界への第一歩
  4. かすみがうらから世界へとつながる学び
  5. 開発教育のはじめの一歩。気軽に世界とつながろう!
  6. 〜JICAオンライン出前講座を体験した生徒の声〜

奈良県立橿原市立真菅小学校

  1. 英語を学ぶ”理由”を見つける機会として
  2. 現地の子どもたちと交流授業!世界とつながる出発点に
  3. 世界を知ることで生まれた意識の変化
  4. 「知る」からはじめる開発教育
  5. リアルな学びから深まる異文化理解の体験

語り手

小松崎 亮 先生
茨城県かすみがうら市立霞ヶ浦中学校 教諭

1. 生徒たちに”リアル”を伝えるために

Q. JICAオンライン出前講座を授業に取り入れたきっかけについてお聞かせください。

本校では7年生(中学1年生)の英語授業の一環として、JICAオンライン出前講座を活用しました。
使用していた教科書に「Think Globally, Act Locally」という単元があり、この中でアフリカの貧困問題が取り上げられていました。学校に通いたくても通えない子どもたちや、川で水を汲む子どもたちの姿が描かれており、生徒たちにはこれらを抽象的な知識ではなく、現実的な問題として捉えてほしいと思い、専門的な知見を持つJICAの職員から直接話を聞く機会を設けました
また、教科書の中だけの学びではなく、実際に世界で活躍されている方の話を聞くことで、生徒たちの世界への興味が高まると期待しました。

2. 英語でのプレゼンテーションに挑戦!

Q. JICAオンライン出前講座当日、生徒たちはどのような様子でしたか?

はじめにJICAアフリカ部の方から、マラウイについてのプレゼンテーションをしていただきました。貧困や、教育、気候変動などに関するマラウイの課題についても紹介いただき、生徒からは「教科書だけでは分からなかった現実のイメージがついた」という声が上がり、普段の授業では得られない学びの深さがあったことがうかがえました

JICAオンライン出前講座で、マラウイについての話を聞いている生徒たち

その後、生徒たちは小グループに分かれ、SDGsに関するプレゼンテーションを行いました。具体的には、SDGsの17のゴールの中から自分の興味のあるものを選び、事前に調べた内容や今後挑戦したいことについて英語で発表しました。SDGsについて考えながら英語でプレゼンテーションするというのは、生徒にとってはかなりの挑戦でしたが、事前の調べ学習の時間も含め、全員が積極的に取り組む姿はとても印象的でした。

▼当日の詳しい実施レポートはこちらからご覧いただけます。
英語授業×国際協力出前講座!中学生も英語でプレゼン

Q. JICAオンライン出前講座を通して、生徒にどのような変化が見られましたか?

本校は全校生徒が300人弱という小規模な学校で、外国につながる生徒も非常に少ない環境です。学校以外でも世界に触れる機会が限られているので、JICAオンライン出前講座は生徒たちにとって非常に刺激的な体験だったようです。講座後には「自分の目で世界を見てみたい!」と、長期休みに海外でのホームステイを希望する生徒が現れました

また、SDGsに関する英語でのプレゼンテーションに取り組んだことをきっかけに、課題解決を考える時間では、さらに活発にアイディアが飛び交うようになりました。英語の授業の一環として取り組んだJICAオンライン出前講座でしたが、教科横断的な学びとして広がり、生徒たちが世界に目を向ける貴重なきっかけとなったと感じています

4. かすみがうらから世界へとつながる学び

Q. 今後取り組んでみたい開発教育について教えてください。

本校が所在するかすみがうら市は、残念ながら人口減少が進んでおり、将来も地元で生活することやここでの未来を考える生徒が少なくなっています。そんな中、生徒たちが世界に目を向けると同時に、自分たちの街を活性化させるきっかけを提供したいと考えています。JICAオンライン出前講座を通じて世界とつながった経験を活かし、次は自分たちの住む街について海外の子どもたちにプレゼンテーションする機会を設けることができれば、大変有意義な時間になると思っています

また、茨城県内では毎年「英語プレゼンテーションフォーラム」が開催されています。このフォーラムでは、SDGsをテーマにしたプレゼンテーションに挑戦したいと考えています。JICAオンライン出前講座での学びのように、これからも教科横断的な学習を広げ、生徒たちの視野をさらに広げていきたいと思います。

5. 開発教育のはじめの一歩。気軽に世界とつながろう!

Q. JICAオンライン出前講座のおすすめポイントを教えてください!

JICAオンライン出前講座は、生徒たちの国際的な課題への関心を高めるのにピッタリです。学校の外の人とつながることで、新しい価値観や考え方に触れる機会を提供してくれます。本校の生徒たちは、講座を通じて日本の豊かさに気づいたことで、自分たちの生活を見つめ直す良い機会にもなったようです。私のように、開発教育に興味はあるけど、何から始めたらいいかわからないと思っている人にぜひおすすめしたいです!

講座を通じて、日本とアフリカの環境の違いについて学ぶことができました。特に、水に関する課題について知り、蛇口をひねったら飲める水が出てくるってすごいことなんだ!と気づきました。講座を受けてから、日本とは環境が異なる他の地域の現状や、世界が抱える課題についてもっと知りたいと思い、調べてみるようになりました。日本にいながらも、募金活動など世界のためにできることがあると思うので、まずは自分ができることから行動していきたいと思います。

語り手

田中 伸哉 先生
奈良県立橿原市立真菅小学校 教諭

1. 英語を学ぶ”理由”を見つける機会として

Q. JICAオンライン出前講座を授業に取り入れたきっかけについてお聞かせください。

外国語教育における目的意識を持たせたいと思ったことがきっかけで、6年生の英語の授業でJICAオンライン出前講座を取り入れました。小学校の外国語教育では、英語学習の必要性が児童たちの生活範囲内にはあまり存在せず、そのため必然性を感じてもらうことが難しいと感じていました。そこで、まずはオンラインで世界とつながって、海外の同世代の子どもたちとつながる機会を設けたいと考えました

また、海外の子どもたちと交流することで、異文化理解や国際的な視野を広げることができるのではないかと期待しました。

2. 現地の子どもたちと交流授業!世界とつながる出発点に

Q. JICAオンライン出前講座当日、生徒たちはどのような様子でしたか?

本校では、6年生の3学期にJICAオンライン出前講座を実施しました。
4クラスがスリランカ、タイ、インド(2校)のそれぞれの学校とオンラインでつなぎ、現地で活動されているJICA海外協力隊の方の協力を得て、現地の子どもたちとの英語による交流授業を行いました。お互いの文化を紹介したり、クイズをおこなったりと大いに盛り上がり、児童たちは英語を使って海外の同世代の子どもたちと交流することで異文化を身近に感じ、自信もついたように見受けられました

タイの中学校とつながり、交流する様子

また、発表に向けた準備の段階では、児童たちは自らALTの先生に英語の発音を確認したり、わかりやすい伝え方について工夫したりと、主体的に取り組む姿勢が印象的でした。

▼当日の詳しい実施レポートはこちらからご覧いただけます。
【インド⇔奈良県】 インドの子どもたちと英語で交流してみたい!
【スリランカ⇔奈良県】 スリランカの子どもたちと英語で交流してみたい!!
【インド⇔奈良県】 質問してみたら「新しい発見」がたくさん!
【タイ⇔奈良県】 異文化の中での共通の話題は?!タイの生徒と交流!

3. 世界を知ることで生まれた意識の変化

Q. JICAオンライン出前講座を通して、児童にどのような変化が見られましたか?

JICAオンライン出前講座を実施したのは6年生の3学期で、卒業を間近に控えた時期でした。そのため短い期間ではありましたが、この講座を通じて児童たちにさまざまな変化が見られました。オンラインでつながったそれぞれの国について自ら調べる児童や、その国の料理を実際に食べに行った児童もいました。特に印象的だったのは、街中で外国人の方を見かけた際の児童たちの発言の変化です。以前は道徳的に少し気になるような発言も見られましたが、講座後には「どこから来たのか聞いてみたいな」といったポジティブな関心を示す発言に変わっていました。異文化や外国の方に対する視野が広がり、より前向きな姿勢が育まれたことを実感しました

4. 「知る」からはじめる開発教育

Q. 今後取り組んでみたい開発教育の取り組みについて教えてください。

現代の子どもたちは、インターネットやSNSなどから得た情報を元に話をしていることが多いと感じます。「生の声」を聞く機会が非常に乏しい状況にあり、それにも関わらず、「自分は知っている」という感覚になり、頭でっかちになっているように思えるのです。実際、海外に興味を持っている児童は多いのですが、その考え方が偏っていると感じることがあります。私自身も海外に行く機会が多いのですが、現地で出会った人々との会話や体験を思い出すと、「それは差別的な考え方だよ」と指摘したくなるような発言や考え方をしてしまう児童がいるのも事実です。

そうした中で子どもたちにとって重要なのは、まず「生の声」を聞くことだと思います。現地に実際に行くことは難しい場合も多いですが、現地の人々の声や、現地を訪れた人が実際に体験した話を直接聞くことが大切なのではないでしょうか。それをきっかけにして、さまざまな考え方に触れ、開発教育に繋げていけると感じています。まずは「知ること」から始めることが、開発教育を進める第一歩だと思っています。

5. リアルな学びから深まる異文化理解の体験

Q. JICAオンライン出前講座のおすすめポイントを教えてください!

やはり最大の魅力は、現地で活動する方々の「生の声」を直接聞けることです。インターネットや書籍では得られないリアルな情報を知ることで、異文化への理解が深まります。また、現地の子どもたちとのオンライン交流を通して、国境を越えたコミュニケーションを体験できる点も大きなポイントです。子どもたちの主体性を引き出し、学びを深めるJICAオンライン出前講座は、異文化理解の第一歩として非常におすすめです!

編集後記

実際に現地で活躍している方々の声を聞き、他国の課題や文化を身近に感じることで、児童・生徒たちは世界をグッと近くに感じたのではないでしょうか。教室にいながらも世界とつながることで、子どもたちの視野が大きく広がる様子がとても印象的でした。また、現地の方との交流やリアルな声が、子どもたちに深い気づきをもたらしていることも伝わってきました。日本から気軽に世界とつながれるJICAオンライン出前講座、ぜひみなさんの授業でも取り入れてみてください!


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