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『GiFT Summit 2013』報告 (1/2)

Update 2013/06/21

午前の部(国連大学にて)

【はじめに】
GiFT 理事長、島田精一からのGiFTのもつ大きな世界観=『岩倉使節団派遣からおよそ140年。終戦からおよそ70年。今から70年後の地球社会へ、地球市民(言い換えると、真のグローバル人材)を贈りたい』というメッセージを込めた挨拶をさせていただきました。

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それから会場では今自分が感じている気持ちを素直に伝え合う「チェックイン」という時間へ。これはGiFTの日々の活動でも大切にしている「自分の今の気持ちと向き合う」という部分でもあります。

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盛り上がるチェックインの後、事務局長の辰野まどかからは1つの新聞記事と共にGiFTの目指す世界について提起がなされました。

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ここで取り上げた記事は、『グローバル人材「無理」…高校・大学生の半数超』という記事。
「今からグローバル化のための教育を受けても自分は間に合わない」と感じている割合は、高校生で50%、大学生で55%という衝撃的なリサーチ結果を前に、辰野は「グローバル人材とはそんな遠いものではない。英語ができるとか表面的なことではなく、地球の一員としての感覚は誰にでもすでに自分の中にあり、それに気づき育てるところから地球市民としての一歩は踏み出せるということを感じてもらいたい」とGiFTに込めた思いを語りました。 また自身が地球市民を意識し出した高校生のときの経験にも触れ、私たち1人1人が地球の未来を創っていくという感覚を大切にしていくことに対し、

「私たちはもともと同じ地球に生まれた地球市民。先ほどの島田理事長の話から繋げると、今、この時代は、岩倉使節団から140年、終戦から70年が経過しています。そういう時代に生きる私たちが、これから70年間で何を創っていけるのか。そんな問いを持ちながら生きることを大切にしたいと思っています。」

「70年後、世界の人口は100億人を超えいっぽう日本の人口は6,000万人ほどになると言われています。ここでGiFTが大切にしていきたい視点は、日本がダメになる…ということではなく、同じ地球に生きる者として地球に対してどうこうどうしていくのか、という発想を持ち行動するということ。GiFTはそんな地球市民を増やしていきたいと考えています。」

というメッセージで表現したGiFTの世界観。 そんな世界観が確かに今の社会とつながっていると示してくれたのが、続くeARThist Dialogueのゲストのお二人でした。

 

【eARThist Dialogue】

GiFTが大切にしていきたいのは、1人1人のライフストーリーとその中にすでにある「地球市民という体験」。 ということで、まずはゲストの加藤重治さん(文部科学省国際統括官)と船橋力さん(株式会社ウィル・シード会長)のお2人をお迎えし、これまでのご経験、そして世界の第一線を見て感じている地球社会とは何なのか、日本発信で何ができるのか、についてお話を聞かせていただきました。

 

加藤重治さん:
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GiFT Curveをスクリーンに公開し、これまでの数ある自身の体験についてお話いただくの中で、加藤さんが多様性を感じた瞬間として挙げたのは、ケネディ・スクールで受けた言葉でした。

「『あなたたちがいることこそが、われわれの宝だ。』そう教授は私を含めた留学生に対して言ってくれました。学生の多様性を本当に認めてくれていると感じると共に、アメリカはなんてオープンな社会なのかと、その国の持つ多様性に対する懐の広さを実感した瞬間でもありました。」

またこれからの地球社会について留学に対する考え方の変化に触れ、 「これまでの留学事業は、日本から諸外国、特に先進国への一方的なものでありましたが、近年は“双方向”になっています。これは日本のみならず、海外においてもこれからの地球社会に向け『どんどん外へ飛び出して、異文化の体験を積む必要性』を感じているからに他なりません」 と、大学生を中心とした若者が「地球体験(海外体験)」を通じて異文化をリアルに体験することの重要性が増していることを解説いただきました。

船橋力さん:
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続いて、ダボス会議から戻ってきたばかりの船橋さん。「留学時代に大事にしていたことは“respect and accept”という言葉でした。『人のことを尊重して受け入れる』ということで、私にとってキーワードとなっている言葉です。早い時期からの海外体験により、『勉強ができる』が全てじゃない、スポーツやダンスなど、いろんな場面においてみんなを尊敬して受け入れられる、そんな文化を肌で感じたことが大きかったのかもしれません。」

「大学生の後半に起こったショックな出来事のあと、世界一周旅行へ出て、その中でフィリピンのスラムを訪問する機会があり、貧しくはあるものの、歌と踊りと祈りと共に彼らが自分たちよりも心豊かな生活をしていることに衝撃を受けたんです。その後、そんな直接的な体験ができない人が疑似体験で途上国と先進国の構造を感じてもらえるように、『貿易ゲーム』などのゲーム型の研修をし始めたのがウィル・シードの始まりでした。」

また、ヤング・グローバル・リーダーに選出された後の自身の変化にも触れ、「世界から見た日本の存在感のなさにびっくりし、これはどうにかしなければ」という想いを持ち日本でグローバル教育について取り組んできたこと、震災以降いろいろあった中で「僕はもっと困っている人のところに行きたいんだ」と気づき、今がその時期だと思い至ったことで昨年ウィル・シード社長を退任し、これからの自分の道を模索しているところだ、と率直なお話をいただきました。

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会場ではお二人のストーリーシェアを受けての感想や「今、自分が感じていること」「彼らの地球市民体験から思うこと」などを自由に共有いただく時間をもちました。 引き続き、ダイアローグという形で、お二人には時間の許す限り『これからの地球社会で求められる人材と日本人に求められていること』をテーマにお話いただきました。

お二人がくださったメッセージとしては、

船橋さん Respect and Acceptという言葉は、相手だけでなく、自分自身にも、そして地球にも向けて欲しい言葉。その上で、『Talk から Do』として、もっと動くということ、そして『Take から Give』という感覚をこれからの地球社会に向けて地球市民に持ってもらいたいこと。特にNATO (No Action, Talk Only)にはならないように気をつけてもらいたい。」

船橋さん「日本人に対しては、もっと自覚と誇りが必要だと感じていて、これまで自分たちがやってきたこと、もっているもの、日本人としてのあり方がこれからの世界に必要となってくると感じていて、それをどう地球に還元するのか、を考えていくことがこれからの地球社会には必要な視点だと思っている。さらに、ヤング・グローバル・リーダーでの経験などを通じて感じるのは、日本人には好奇心とアントレプレナーシップ(起業家精神)が足りないということ。『世界に出ていかなければ』という感覚ではなく、世界には面白いことが待っていることを感じて、自ら行動することがこれからの日本人には必要だと思っている。」

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加藤さん
「今感じているこれからの地球社会に必要なのは、異文化の人とコラボできること。つまり、異なるバックグラウンドを持った仲間と一緒に価値創造できる能力、態度、やる気をもっている人が求められていると感じている。価値創造は何も社会を変えるような大きなものだけではなく、日々の小さな価値を作っていくことで良く、その大きさよりもまず今の若者たちには自分は異文化の仲間と一緒に何か作ることができるという成功体験をもってもらいたい。」

加藤さん「グローバル人材と言うとき、日本人のアイデンティティという話になることが多いが、本質として求められていることは、自分がどう思うかを表現できる、自分の言葉で語れるということだ。また、日本人にこれから必要なのは、多様性にもっと寛容になること。日本人は多様性に慣れていないところがあるが、海外などでのリアルな体験を積んで、多様性をうまく活用し、活性化していくことができるようになっていってもらいたい。」

・・・今までの経験を踏まえてのお二人のお話は、自分で動き、リアルに体験することの大切さ、そしてその経験からこそ培うことができる地球市民としての土台を日本人に持っていってほしいという心強いメッセージでした。

 

eARThistと出会うランチ(国連大学にて)

ビュッフェ・立食形式のランチでは、みなさんご飯を取るのを忘れてしまうかと思えるほど、場が盛り上がっていました。ランチの間にはGiFT関係者の方からのご挨拶をいただきました。

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最初にご挨拶いただいたのは、アドバイザーとしてGiFTを応援してくださっている福原正大さん(Institution for a Global Society株式会社(IGS)代表取締役社長)。偶然にも、本日のプログラムの冒頭で事務局長の辰野が紹介した調査はIGSが行ったものでした。

「調査でも浮き彫りになったのは、グローバル人材の定義による問題で、自分はグローバル人材にはなれないと思ってしまっている若者がたくさんいるということでした。それ対してGiFTが持つ『地球市民となる』『地球にどうやって貢献するのかを考えること』がグローバル人材だと考えられるようになっていってもらいたいと思っています。」

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乾杯の挨拶は、同じくアドバイザーで、今回この日のために北海道から来てくださった石井晴子先生(北海学園大学教授)。

「グローバル人材という言葉は『使えるか使えないか』で人を判断するニュアンスがあるために55%の若者が『英語ができないからグローバル人材にはなれない』と思ってしまう、ということが起こっているのだと感じています。だからこそ、GiFTと一緒にまず見せていきたいのは、人の中の複雑性や多様性、さらには社会における多様性、その全てを受け入れることの大切さや身近さ。言い換えれば、1人1人が人として人を受け入れることが地球市民でありグローバル人材の始まりだ、というメッセージを広めていくことだと感じています。それこそ、そんな想いを大切にGiFTがこの場から始めることで、70年後には地球市民を超えた、宇宙市民という感覚まで近づけるのではないか、とまで思えるのです。」

最後は、アドバイザーとして今回のサミットの相談に乗ってくださっていた森田英一さん(株式会社ドアーズ代表取締役社長)、そしていつもGiFTの活動についてアドバイスをくださっている文部科学省 国際企画専門官の佐藤邦明さんにもご挨拶いただき、地球市民の育成の大切さ、今後の社会における重要性についてお話いただきました。
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